VOICEVOX の読み間違いを直すには — 辞書で直る語・直らない語
公開: 2026-10-10・更新: 2026-10-10
VOICEVOX の読み間違いは、ユーザー辞書に登録すれば直せます。ただし辞書は 1 つの語に 1 つの読みしか持てません。 「角(かど/つの)」「空(そら/から)」「今日(きょう/こんにち)」のように文脈で読みが変わる語(同形異音語)は、辞書に登録すると、その語がどの文に出ても同じ読みになります。ある文が直ると、別の文が読み違えるようになります。こうした語は、合成の前に文ごとに読みを決める必要があります。
この頁では、VOICEVOX 0.25.2 が読みの分かれる語をどれだけ読み違えるか、辞書に登録すると何が起きるかを、実際に測った数で示します。
YomiWake は VOICEVOX の公式のソフトではありません。 株式会社 山愛 マスマールが作った別のアプリで、この頁の数値も当方が測ったものです。
VOICEVOX はなぜ読み間違えるのか?
VOICEVOX は、文を読み(カナ)に直すときに辞書と解析器(Open JTalk)を使い、語ごとにいちばんありそうな読みを選びます。前後の語のつながりは少し見ますが、文の意味(料理の話か、気持ちの話か)までは見ません。そのため、読みが 2 つ以上ある語は、文が変わっても同じ読みになりがちです。
今回測った語のうち、文によって正しい読みが違う語は 27 語ありました。そのうち 21 語は、VOICEVOX がどの文でも同じ読みをしました。たとえば「角」は 3 つの文すべてで「かく」、「辛い」は「この料理は辛い」でも「つらい」と読みました。
VOICEVOX は読みの分かれる語をどれだけ読み違えるのか?
読みの分かれる語を集めた 80 の文(読みを確かめる語は 77 か所)を VOICEVOX 0.25.2 に読ませたところ、77 か所のうち 30 か所(39%)を読み違えました。正しく読んだのは 46 か所、残る 1 か所は「日本」を「にっぽん」と読んだもので、誤りではないため別に数えました。判定できなかった所はありません。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 測った日 | 2026-10-10 |
| VOICEVOX の版 | 0.25.2(ユーザー辞書は空。登録した語の影響が入らないようにした) |
| 話者 | ずんだもん(ノーマル)。四国めたん(ノーマル)でも 80 文すべて同じ読みだった |
| 文の数 | 80(そのうち読みを確かめる語がある文は 74) |
| 読みを確かめる所 | 77 か所 |
| 正しい読み | 46 か所(60%) |
| 読み違い | 30 か所(39%) |
| どちらも誤りでない読み | 1 か所(日本 → にっぽん) |
| 判定できなかった所 | 0 か所 |
この 80 文は、読みの分かれる語をわざと集めた難しい文です。語ごとに、読みが違う文を組にして入れてあります。ふつうの文章でこれほど読み違えるわけではありません(下の「この数字はどこまで当てになるのか?」)。
読み違えた 30 か所
VOICEVOX の読みは、発音をふつうのかなに書き直しています(VOICEVOX は「ほう」を「ホオ」のように発音どおりに返すため)。
| 語 | 文 | 正しい読み | VOICEVOX の読み |
|---|---|---|---|
| 方 | あの方はどなたですか。 | かた | ほう |
| 角 | 次の角を右に曲がってください。 | かど | かく |
| 角 | 鹿の角が生えている。 | つの | かく |
| 角 | 角が立つ言い方だ。 | かど | かく |
| 風 | そんな風に言わないでほしい。 | ふう | かぜ |
| 市場 | 朝の市場は活気がある。 | いちば | しじょう |
| 最中 | 和菓子の最中を食べる。 | もなか | さいちゅう |
| 人気 | 人気のない夜道を歩く。 | ひとけ | にんき |
| 生物 | 生物は早めに食べてください。 | なまもの | せいぶつ |
| 色紙 | 寄せ書きの色紙をもらった。 | しきし | いろがみ |
| 今日 | 今日の日本社会において重要だ。 | こんにち | きょう |
| 一行目 | 一行目を読んでください。 | いちぎょうめ | いっこうめ |
| 一行 | この一行だけ読んでください。 | いちぎょう | いっこう |
| 十分 | 十分前に着く。 | じゅっぷん | じゅうぶん |
| 上手 | 舞台の上手から登場する。 | かみて | じょうず |
| 下手 | 下手に出る。 | したて | へた |
| 下手 | 舞台の下手に立つ。 | しもて | へた |
| 何人 | あの人は何人ですか。 | なにじん | なんにん |
| 表 | 紙の表と裏を確認する。 | おもて | ひょう |
| 金 | 金がない。 | かね | きん |
| 空 | 空の箱を捨てる。 | から | そら |
| 空 | パンチが空を切った。 | くう | そら |
| 辛い | この料理は辛い。 | からい | つらい |
| 寒気 | 強い寒気が流れ込む。 | かんき | さむけ |
| 側 | 彼の側にいたい。 | そば | がわ |
| 仮名 | 仮名で表記する。 | かな | かめい |
| 額 | 額に汗をかく。 | ひたい | がく |
| 開く | ドアが開く。 | あく | ひらく |
| 止める | タバコを止める。 | やめる | とめる |
| 雨 | 天気雨が降った。 | あめ | う |
正しく読めた所も多くありました。「四月一日」「毎月一日」は ついたち、「一日中」は いちにちじゅう、「あと十分で」は じゅっぷん、「十分な準備」は じゅうぶん、「寒気がする」は さむけ、「人気のある店」は にんき と、どれも正しく読んでいます。
辞書登録で直る語、直らない語は?
どの文でも同じ読みでよい語(人の名前・作品の名前・専門用語など)は、辞書登録で直ります。文によって読みの変わる語は、辞書では直りません。 1 つの文を直す読みを登録すると、同じ語を含む別の文がその読みに変わるからです。
上で読み違えた語のうち、名詞の 22 語で試しました(送り仮名のある 辛い・開く・止める は、品詞と活用の指定が要るので試していません)。読み違えた文の正しい読みを 1 語ずつユーザー辞書に登録し、その語を含む 58 か所を読ませ直しました(1 語ずつ登録して測り、すぐ消しています)。
| 登録の優先度 | 読みが変わった語 | 直った所 | 新しく読み違えた所 | 正しい所の数(登録の前 → 後) |
|---|---|---|---|---|
| 5(既定) | 22 語のうち 8 語 | 9 か所 | 7 か所 | 31 → 33 |
| 10(最高) | 22 語すべて | 24 か所 | 26 か所 | 31 → 29 |
既定の優先度 5 では、「市場」「人気」「今日」など 2 文字以上の語の多くは、登録しても読みが変わりませんでした(VOICEVOX にもともとある辞書の語が勝つため)。優先度を 10 に上げるとすべての語の読みが変わりましたが、直った所とほぼ同じ数だけ、それまで正しかった所が読み違えるようになりました。優先度 10 で登録したときの例です。
| 登録した語 | 直った文 | 新しく読み違えた文 |
|---|---|---|
| 金 → かね | 金がない。(きん → かね) | 金のネックレスを買った。(きん → かね) |
| 空 → から | 空の箱を捨てる。(そら → から) | 青い空が広がる。(そら → から) |
| 寒気 → かんき | 強い寒気が流れ込む。(さむけ → かんき) | 寒気がするので早退した。(さむけ → かんき) |
| 方 → かた | あの方はどなたですか。(ほう → かた) | 駅はこっちの方です。(ほう → かた) |
| 側 → そば | 彼の側にいたい。(がわ → そば) | 東京側の意見を聞く。(がわ → そば) |
例外は「側 → そば」を優先度 5 で登録したときで、「彼の側に」だけが そば になり、「東京側」は がわ のままでした。優先度 5 で、2 つの文の両方が正しくなったのはこの 1 語だけです。
「一日」を「ついたち」と読ませるには?
VOICEVOX 0.25.2 は、何もしなくても「四月一日」「毎月一日」を ついたち と読みました(2026-10-10 に測定)。読み違えた文だけ、その所をひらがなで「ついたち」と書くのが確かです。
「一日 → ついたち」を辞書に登録するのはおすすめしません。優先度 5 では読みが変わらず、優先度 10 では「一日中」が「ついたちちゅう」、「一日一善」が「ついたちいちぜん」、「一日後」が「ついたちご」、「十一日」が「じゅうついたち」になりました(測った 6 か所のうち 4 か所が読み違いに変わった)。
読み違いを直す方法はどれがよいか?
どの文でも同じ読みでよい語は辞書登録、文によって読みの変わる語は、その文だけを直す方法を選びます。 それぞれに向き不向きがあります。
| 方法 | 向いている語 | よい所 | 気をつける所 |
|---|---|---|---|
| VOICEVOX のユーザー辞書に登録する | 人の名前・作品の名前・専門用語など、いつも同じ読みの語 | 一度登録すれば、どの原稿にも効く。無料 | 1 つの語に 1 つの読み。読みの分かれる語では、別の文が読み違えるようになる。既定の優先度では効かない語がある |
| 原稿をひらがなに書き換える | 読み違える所が少ないとき | 確実で、すぐできる。無料 | 原稿の字が変わる(字幕や文章として使いにくい)。同じ語が出るたびに書き換える |
| VOICEVOX の画面で読みを直す | 短い原稿、1 文ずつ作るとき | その文だけを直せる。原稿の字は変わらない | 長い原稿では手間が大きい。どこを読み違えているかは、聞いて探す |
| YomiWake で文脈から読みを決める | 長い原稿、読みの分かれる語が多いとき | 読みの分かれる語を文脈で決めてから VOICEVOX に渡す。確かめた所に印が付く | Mac だけ。AI の段階は有料(クレジット)。原稿の文は当方のサーバに送られる。AI も間違えることがある |
読みの分かれる語が少ない原稿なら、YomiWake を使わずに、ひらがなへの書き換えや VOICEVOX の画面での直しで十分です。
YomiWake を通すとどうなるのか?
同じ文を YomiWake の各段階に通したときの、読みの正しかった所の数です。YomiWake の「速い」段階は AI を使わず、辞書と解析器だけで読みます。「ふつう」から上は、読みの分かれる語を AI に問います。
| 読ませ方 | 測った日 | 正しい読み |
|---|---|---|
| VOICEVOX 0.25.2 のまま | 2026-10-10 | 77 か所のうち 46(ほかに「日本 → にっぽん」が 1) |
| YomiWake 速い(AI なし) | 2026-10-10 | 77 か所のうち 46 |
| YomiWake ふつう(Jev) | 2026-09-25 | 75 か所のうち 75 |
| YomiWake ていねい(上位の AI は当時のもの) | 2026-09-25 | 75 か所のうち 75 |
| YomiWake 最大(上位の AI は当時のもの) | 2026-09-25 | 75 か所のうち 75 |
| いまの上位の AI(OpenAI のモデル 2 つ)での試し | 2026-10-04 | どちらのモデルも 2 回とも 77 か所のうち 77 |
- 「速い」段階は、この難しい文では VOICEVOX とほぼ同じでした(正しい数は同じ 46。正誤が分かれたのは 5 か所)。読みの分かれる語を直すには、AI に問う段階が要ります
- 9 月 25 日の記録は、80 文のうち先に作った 78 文(75 か所)だけで測ったものです。残りの 2 文(一行・空)は後から足しました
- ていねい・最大の上位の AI は、9 月 25 日の後に OpenAI のモデルに替えました。最後の行は、AI に問う所をいまの上位の AI に問い直した記録です(YomiWake のサーバを通しで測り直したものではありません)
この 100% は、初めて見る文での正解率ではありません。 80 文は YomiWake の開発に使った問題で、AI に渡す語の説明には、これらの文と同じ言い回しの例も入っています。ふだんの原稿で間違えないという意味ではないので、YomiWake を使うときも、公開の前に耳で確かめてください。
この数字はどこまで当てになるのか?
VOICEVOX の 39% は、読みの分かれる語を集めた難しい文での読み違いの割合で、ふつうの文章の読み違いの割合ではありません。 ふつうの文章では、こうした語は出てくる数が少なく、出てきても多くはよく使う方の読みです。
- 文の選び方: 80 文は、読みの分かれる約 30 語について、読みの違う文を組にして作ったものです。どちらの読みも同じくらい入っているので、「いつも同じ読みをする」読み方では半分ほど外れます
- 正解の付け方: 正解の読みは、YomiWake の設計の文書で、文ごとに人が 1 つ(一部は 2 つ)決めたものです。AI に決めさせたものではありません。文によっては、別の読みでも誤りとは言い切れないものがあります(「ドアが開く」の ひらく、「下手に出る」の へた など)。ここでは決めた正解に合わないものを読み違いと数えました
- 比べたのは読みだけ: アクセント(高低)は見ていません。「おう」と「おお」、「えい」と「ええ」は同じ発音として比べました
- VOICEVOX の版と辞書: 0.25.2 の 1 つの版、ユーザー辞書が空の状態で測りました。辞書に語を登録してある VOICEVOX では結果が変わります。版が変われば読みも変わることがあります
- YomiWake の数: 上の段のとおり、開発に使った問題での成績で、記録の日付も VOICEVOX の測定と違います
測り方と再現の手順
VOICEVOX ENGINE の POST /audio_query に文を渡し、返ってきたカナ(accent_phrases の moras)から、読みを確かめる語の所を取り出しました。正しい読みの文と、発音の形(「ホオ」と「ほう」を同じにする)にそろえて文字ごとに並べ、その語に当たる所が正解の読みか、別の読みかを見ています。別の読みとして決まった候補にも当てはまらないものは「判定できなかった所」として別に数える作りですが、今回は 0 か所でした。辞書の試しは、ユーザー辞書が空の VOICEVOX のエンジンを別に起動して行い、ふだん使っている辞書には触れていません。
再現の手順(YomiWake のリポジトリで。VOICEVOX が Mac に入っていること):
- 辞書の空のエンジンを別に起動する:
HOME=$(mktemp -d) /Applications/VOICEVOX.app/Contents/Resources/vv-engine/run --host 127.0.0.1 --port 3053 - 測る:
node scripts/marketing/voicevox-misreading.ts --engine http://127.0.0.1:3053 --dict-experiment --try 一日=ついたち - YomiWake の「速い」段階:
node src/cli.ts golden run test/golden/homographs_v1.jsonl test/golden/homographs_v2.jsonl --backend none --mode fast
結果は reports/voicevox-misreading-(日付).json に、文ごとの読みと一緒に書かれます。